雲乃みい様:守×リュート



新年にカンパイ!? (6/6)


「あー腹いっぱい! 今日はいい一日だったなー」
夜ももうすぐ0時を迎えようというころ守はキッチンにいた。
鼻歌を歌いながら冷蔵庫からコーラを出していると鈴哉もやってきた。
「えらく機嫌がいいな」
「そりゃーもう! 初詣は楽しかったし、ネイトのおせちはうまかったし!」
初詣(プラスご休憩)のあと家に帰ってからは、外出しなかったらしい鈴哉とネイトとともにネイトお手製のおせちと雑煮を四人で食べたのだ。
ネイトがリュートの着替えを持ってきていたので、帰宅してからはせっかくの振袖姿を見れなくて残念だったがしょうがない。
リュートの着物姿も、肌襦袢姿も、わかめ酒のときの姿もばっちり脳内に焼きつけてある。
思い出すだけで自然と顔がにやける守に対して鈴哉は疲労感が漂っていた。
「鈴は疲れてんな? 飲みすぎ?」
鈴哉とネイトもきっとふたりで初詣に行くのだろうと思っていたが、家でずっと飲んでいたらしい。
「……まあな」
ミネラルウォーターを取り出して喉を潤す鈴哉の横顔を眺めながら守は、
「二日酔いにならないといいなー」
と言い、そしてどうしても口がうずうずして今日の上機嫌の理由を口から滑らせた。
「なぁなぁ、鈴ー」
「なんだ?」
「わかめ酒って知ってる?」
「……あ゛?」
一瞬にして鈴哉の眉間に深いしわが寄ったが、デレデレと鼻の下を伸ばし幸せ満点の守は気づかない。
「もー! わかめ酒ってめちゃいい! 超うまいよ! もうリュートすっげぇ可愛かったし、最高!!」
ホテルでのことを思い浮かべるとデレデレは止まらない。
最後の最後まで可愛かった、と気分はマックスになる。
「鈴もさ、ネイトとしてみれば? わかめ酒!」
「……」
「ぜーったい楽しいよ! あ、わかめ酒っていうのはー」
「……」
黙りこんでいる鈴哉に夢中でわかめ酒の解説をしていく守。
「―――っていう感じで! あ、そうそうわかめ酒のことはネイトと一緒にネットで見かけたから、ネイトも詳しいと思う! そーいや、もしするならどっちがするんだ? 鈴たちの場合?」
「……」
「交代制でもいいんじゃね?!」
「……」
「チャレンジしたら教えてよ! どうだったのかさ―――……うあっ!!」
喋っている途中、強烈な蹴りが飛んできて守はその場に尻もちをついた。
「す、すず?」
「……変態」
間違いなく、氷点下。
突然のことに唖然としていると鈴哉が恐ろしく冷たい眼差しでそう吐き捨て、自室のドアを勢いよく閉め引きこもってしまった。
「……変態って……俺?」
一人残された守の呟きが一つ、元旦から新年二日へと日付が変わった室内に虚しく響いた。




そして―――鈴哉にとって地雷だったらしいわかめ酒については―――

「兄さん、なんか今日いいことでもあった?」
「んー? ああ、今日すっごくいい酒飲んでさー」
「へー」
「リュートも今度飲んでみればいいよ、守とー」
「ふーん。なんていうお酒?」
橋本兄はにっこりと満面の笑みで弟を見て、言った。
「わかめ酒」
「……」
鈴哉とは違い、大好きな兄に向かい"変態"、とは言えないリュートだった。





END

*お酒は二十歳になってから*







大人の階段ありがとうございました!
セクハラまがいのリクエストしてすみません…でも私グッジョブ!


みいさんのHP『雲の晴れ間から』R18



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