雲乃みい様:守×リュート



圭さんのSSの続編になっています☆



『SWEET LOVE BIRTHDAY』





「ハッピーバースディ! 守!」
夏のある一日、その日は守の誕生日だった。
すっかり自分の誕生日なんて忘れていた守を鈴哉が橋本家に連れてきたかと思えばサプライズパーティの準備がされてあったのだ。
クラッカーで出迎えられネイトとリュートによって用意されていた御馳走で誕生日パーティは開催された。
「さーてと、俺たちはそろそろ出かけるな」
そしてそうネイトが言いだしたのは喋って食べて騒いで2時間ほどしたころ。
「え? 出掛けるの?」
御馳走はあらかた食べてしまったが考えてみればケーキがまだだ。
この流れでケーキがないということもないだろうが、ネイトと鈴哉は立ちあがって手を振ってくる。
「ああ。せっかくの誕生日なんだし、あとはリュートと二人でゆっくりしろ」
鈴哉が優しく笑いかけ、同意するようにネイトも頷いた。
「そうそ。楽しい誕生日だからなー。とっておきのケーキも用意してあるからリュートに食べさせてもらえよ」
「え、でもケーキあるならみんなで食べようよ」
「いいのいいの、俺たちは。なー、リュート」
でも、とネイトと鈴哉を見比べたあと守はリュートに視線を向けた。
すると何故かリュートは顔を真っ赤にさせている。
「リュート?」
不思議に思い声をかけると、リュートはさらに顔を赤くさせて顔を背ける。
「あ、兄貴と鈴哉はデートなんだよ。邪魔すんなよ」
「そうそー。俺と鈴はラブラブデートだから。んじゃ、頑張れよ〜」
守が戸惑っているうちにあっさりとネイトたちは本当に出かけてしまい部屋にはリュートと二人きりになった。
「……ケーキの用意してくる。俺の部屋に行ってろ……」
にぎやかだった部屋がいっきに静かになる。そんな中でリュートが顔を赤くしたままキッチンへとたった。
守はその背中を見送って、不思議に思いながらもリュートの部屋に向かう。
いつも通りに綺麗に整理された部屋。ベッドに腰掛け守はそわそわとドアの向こう側を思う。
部屋に言われる通りきたけど手伝った方が良かったのだろうか。
迷うけれど大人しく待つことにして――。
「遅いな……」
軽く20分はたった。ケーキ持ってくるだけでそんなに時間がかかるんだろうか。
やっぱり手伝いに、と立ち上がりかけた瞬間ノックの音が響く。
「リュート?」
「……ああ…入るぞ」
「うん?」
なんでわざわざ言うんだろうと眺めているとドアがゆっくりと開き、トレイを持ったリュートが現れ――。
「……」
「あの、ケーキだけど、これ……っ」
ついさっきまでとは違う服を着ているリュートを守が凝視し、その視線に耐えきれないといった風にリュートは俯きながらテーブルにトレイを置いた。
守は呆然としたままトレイを見て、頭の中にクエスチョンマークを大量に浮かばせた。
だがいまはトレイの上に乗せてある生クリームやフルーツ数種にチョコソースよりも、恥ずかしそうにテーブルにそれらを並べているリュートだ。
その格好が大問題だった。
「リュート、その格好って……なに?」
どれほど赤くなるんだろうというくらいに顔や、そして首筋やむき出しになった肩、男なのに無駄毛なんてない綺麗な手足までもが赤く色づいている。
「っ、こ、これは……っ」
リュートはぎゅっと唇を噛み締めてしばらく黙りこみ、意を決するように顔を上げて叫んだ。
「ベビードールだよ!! 見たことないのか、お前!」
恥ずかしすぎるのか喧嘩腰な声。
「……ベビードールっていうんだ、それ」
呼称は知らなかったが見たことはあった。男性向けの雑誌のグラビアや、ネットの画像など。
ただそれらは可愛い女の子や麗しいお姉さんが着ているもので。
「すっげぇ似合ってる」
だけど男だというのに守が見てきた中で一番似合っていて可愛らしい。純白のベビードールは胸元と裾が黒いレースで縁どられていて妙にセクシーだ。
(うっわ、やばい!!)
呆然としすぎていたけれど認識していけばあまりにも刺激的な格好。
ベビードールの下はきちんと女性ものの下着を身につけているらしく、つい下半身に視線を向けるとそれに気づいたかのようにリュートが手で隠す。
それがまた可愛く、守は血が半身にあつまっていくのを感じた。
「その格好……どうしたの?」
「……お前の誕生日だから、特別だっ」
「……ありがと」
嬉しい。けど刺激が強すぎる。理性が一気に崩れそうで視線を逸らした。
頭を振って雑念を追い払っていたらリュートが動く気配。
「……守」
視線を戻せば上目遣いのリュートが生クリームの入ったボールを手に持っている。
そして生クリームを指ですくうと守の口元へと持ってきた。
「ケ、ケーキだ……っ。食えっ」
そう言ったのはリュートで、その顔は真っ赤で――守は顎が外れそうなくらいに口を開いて呆けた。
「は……はぁぁ!??」
一気に顔が熱くなり思わず後退りする。と、追いかけるようにリュートがベッドに乗りあげる。
「っ、ちょ、リュート!?」
さっきまでの羞恥はどうしたのか、リュートは思いつめたような目で守を見つめ生クリームのついた指を自分の唇につける。
さらに守が唖然としているとキスをしてきた。日頃ディープキスは守からしかしないのに今日は自ら舌を差し込んでくる。
咥内に甘い味と熱いリュートの舌が守の舌に絡みついてくる。そして守にしがみついてくる手。
あっという間に理性は焼き切れて守は煽られるように激しいキスを返しベッドに細い身体を押し倒した。
ベビードールの下の素肌に手を這わせると微かに震えたが守の背に手が回ってくる。
水音を響かせながら深いキスを繰り返し、リュートの肌の感触を味わうように手を滑らせ太腿を撫でる。
脚の付け根へと手を移動させ、その中心が固く熱を持っているのに気づき理性だけでなく箍も外れリュートの半身を揉みしだいた。
「っ……んっ、ぁ」
甘く掠れたリュートの声がこぼれ、ハッとして守は身体を起こす。
目を潤ませたリュートに守は焦りながら謝りだした。
「ご、ごめんっ! リュートが可愛いすぎてついっ、まじごめん!」
付き合いだしてだいぶ経つがいまだに二人は最後まで至っていなかった。
リュートの誕生日に一線を越えようとし失敗して以来守は手を出していなかったのだ。
「……なんで、なんで、謝るんだよっ!! お前は……っ」
生理的なものじゃなく、はっきりとリュートの目に涙が浮かびあがる。それにギョッとして慌てて守はリュートの傍によった。
「リュート、どうしたの?」
「お前は俺ともうシたくないのかよ! 俺があのとき痛いっていって止めて……もういいのかよ!!」
「……え?」
「痛がる俺がめんどくさいから、も……う、いいのかっ」
ぼろぼろと涙をこぼすリュートをとっさに抱き締めた。
「なに言ってんだよ、リュート」
「だって。あれからもう半年近くたつのに、全然触れてこないっ。だから不安でっ……今日こんなことまでしたのにっ」
泣きながら言われる言葉すべてが驚きだ。守はリュートの額に額をつけて目を見つめた。
「違うんだ、リュート」
「なにがっ」
「いや、その面倒だったからとかじゃなくって。俺、リュートに痛い思いさせたくないしさ。だからネットとか見て勉強してたんだけど見てるだけじゃ自信つかねーし。かといってリュートに触れたら我慢できなくなるし。どうしたらいいのかわかんなくなって……。でも俺も本当まじでいつもリュートに触れたかったんだよ?」
「で、でもっ、ネックレスも……買わないしっ」
「ネックレス?」
「これ……っ」
少しリュートが離れてベッドサイドからなにかを取ると押し付けられた。見ればリュートがいましているネックレスと対になるネックレスだ。
守がリュートの誕生日にプレゼントしたネックレスのペア。リュートのはシルバーとピンクゴールドのベビーリングが二つ重なったもので、守のはシルバーとブラックシルバーのベビーリング。
「あのとき金なかったから片方しか買えなかったっていって、それっきりだしっ。"一緒にいるだけで幸せ"なのは俺だけなんじゃねーのかよっ」
「ち、違うって!! ネックレスはさ、リュートがしてくれてんの見てたらそれで満足しちゃったっつーか。ご、ごめんまじで!! ていうか俺のために買ってくれたの? 嬉し――え、あああ!?」
焦ったり喜んだりとしていた守はふと気づいたように一層慌てだす。
「リュート!? "一緒にいるだけで幸せ"って、それっ」
「……これ?」
ぐすっと鼻を啜りながらリュートは首にかけたネックレスに触れた。ベビーリングの裏側にはフランス語でJe suis heureux d`etre avec vous(一緒にいるだけで幸せ)とメッセージが彫られている。
「意味知ってたの!?」
「……俺フラ語専攻してるんだから読めて当たり前だろ」
「……っああ〜!」
恥ずかしそうに顔を赤くさせ身悶える守にリュートの表情が少しだけ落ちついた。
「……守」
「なに……? あー、もうはずかしー」
「俺のことキライ?」
「は!? そんなわけないよ! 俺が一番好きなのはリュート! ずっとずっと一緒にいたいのも、幸せなのもリュート!! それに……」
前髪をかきあげため息ひとつついて守はリュートを抱き寄せた。
「まじで不安にさせてごめん。本当はずっと触れたかった、抱きたかった。でもビビってて、まじでごめん」
「ほんとに……触れたい?」
涙にぬれた目が不安げに揺れ、守を見つめる。
守は指で涙をぬぐってあげながら微笑んだ。
「うん、めちゃくちゃ触れたい! つーか……シたい」
「……俺も」
シたいよ――。
と、小さな囁きが熱く胸に響いて、守はきつくリュートを抱きしめると唇を触れ合わせた。
「痛かったら言って」
「うん。でももう……」
「最後までやめないから」
「うん……」
嬉しそうにリュートが微笑む。
それに守も心が温かくなるのを感じ笑い返しながらゆっくりとリュートをベッドに沈めた。

***

「――守」
「なに?」
「お誕生日おめでとうっ」
ひとつになって互いに熱を分け合う中で、最高の誕生日だと守はリュートの笑みを胸に刻みつけた。




END

ベビードールはぁはぁ(*´Д`*) 画像検索してニヤニヤしました(笑)
「***」の部分詳しく!!!詳しくお願いします!!!



みいさんのHP『雲の晴れ間から』R18



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