雲乃みい様:ネイト×鈴哉



Sweet Drug (2/4)


「……ッ、あ」
静かな室内に響くのは水音と、俺の乱れた呼吸、そしてネイトが煽るように言ってくる言葉だけ。
「もう二本も飲みこんでるぜ、鈴哉」
ぺろり、と舌を舐めたネイトの視線の先は俺の下肢部。
両脚を広げられ無防備にさらされたそこ、後孔には言葉通りネイトの指が嵌っている。
指が動くたびにローションが濡れた音を鳴らす。
卑猥としかいいようがない水音と、俺の身体をすべて知っているかのように動く指に、羞恥とともに快感がどうしようもなく全身を這いまわる。
決してものを挿れる場所ではないのだからじゅうぶんにほぐさなきゃいけない。
そう分かっていても、この前戯のあいだはネイトと視線を合わせることができない。
「玩具いれるには十分かなー」
鼻歌でも歌いそうな声で言われ、ちらり視線を向ければ目が合った。
「んなモノ欲しそうな顔すんなって。すぐに挿れてやるから」
「……そんな顔してない」
「またまたー」
「……っ」
笑いながら後孔から指が引き抜かれる。
身体が小さく震え、挿ってない状態こそが普通なのに喪失感に疼く。
挿れられる側なんて考えてもみなかった、以前なら。
だけどいまはもうどちらでも快楽を得られることを身体も―――もちろん俺も知っていて、だから口には出せないけれど早く隙間を埋めてほしいと思ってしまう。
「じゃあ、いっきますよー♪」
これ見よがしにアナルビーズを見せてくるネイトにまた顔を背ける。
そんなものよりも早く繋がってしまいたい。
なんて思ってることを言えるはずもなく、後孔に触れてきた無機質な感触に目を閉じた。
「鈴哉、ほら」
ぐっ、と硬い感触が菊門を押し広げるのがわかる。
水音は聞こえてはこないけれど、身体に小さく響く挿入の音。
じゅうぶんにほぐされていたおかげですんなりと球体がナカへと侵入していくのがわかった。
「……ぁ、……っ」
指とはまったく違う。
冷たい感触がナカにあって、それが人工的なものだと思うと違和感が沸いてしまう。
「まず一個。で、二個目なー」
つぷ、つぷ、と丸いものが挿ってくる。
その形をはっきり内側で感じる。
三個目、四個目ー、とスムーズに増やされていく。
「順調じゃん。しっかしすげーな、どんどん挿ってく」
鈴哉、と呼ばれて薄く目を開ける。
と、後孔の縁をゆるり、となぞられて、
「っ、ん」
つぷ、つぷと、少しビーズを引っ張られた。
やっぱり違う。
凸凹としたカタチが肉壁をこすりながら出ていく感触に鳥肌がたった。
また目をつむると、鈴哉、と呼ばれる。
また目が合って、視線を合わせたまま、ネイトがまた、ビーズを押し込んできた。
「……っ」
「四個、五個ー♪」
どんどん挿れていかれて、増す違和感に思わず声を上げた。
「ちょ……、く……っ、ネイト……っ、待てっ」
「どうしたー?」
「くるし……っ」
途中まではよかった。
けれど自分のナカに挿入された個数とを考えると不安になってくる。
当たり前だがビーズは長い。
使うのを承諾したのは俺だし、わかってたつもりだった。
でも実際どんどん挿ってくるビーズにどこまでくるんだろう、と怖くなる。
いつもよりももっと深いところまで挿ってくるんだ。
「もう……っ、いいっ」
「なにがー? いまから、だろ?」
にっこり、と笑顔が向けられるが、その目はあきらかに俺の焦りを楽しんでいる。
このドSッ、と思った瞬間、またビーズが一気に引き抜かれた。
「ひっ……、ぁっ」
思わずシーツを握りしめる。
腰から走り抜ける感覚は気持ちいいのかそうでないのかわからない。
ただ"刺激"があるのは間違いなく、はっきりと"気持ちいい"とは思えないけれど"不快"ではなかった。
「っ……ん」
初めての感覚に唇を噛みしめていると、またビーズが挿ってくる。
「こうやって挿れて、一気に引き抜いてー、で、気持ちよくなるそうだぜ?」
「も、いい……っ」
「全部挿れなきゃおもしろくねーじゃん。な?」
「いいッ」
「はいはい。"良い"、ね」
「ちが―――ッ、な、んっ?!」
やっぱり玩具はもういい、承諾するんじゃなかった。
いまさら前言撤回するのも情けないが、耐えられない。
本当にもういい、とネイトを見た瞬間後孔に埋まったビーズが振動をはじめた。
律動でも、さっきの出し入れとも違う動き。
「電源入れてたほうが、気もまぎれて挿るかもしれねーだろ?」
俺って優しい☆、なんて笑うネイトを足蹴にしてやりたい。
確かに感じた苛立ちは、だがほんの一瞬で霧散する。
「っ、あ……っ」
振動しながらビーズが挿ってくる。
いま何個目なのかわからないまま、直腸にもハマっているのはわかった。
ありえないところにありえないモノが侵入している。
腹部に違和感はあるのに、体内で蠢いているそれは認めたくないけれど身体を疼かせる。
「んっ……は……っ、く……っ」
眉を寄せて刺激に耐えていると太腿を指先でなぞられる。
それにさえ身体を震わせてしまった。
「スーズナリー」
間延びした声で俺を呼びながら指先は肌を滑って、ほんの少しだけ俺の半身を撫ぜていった。
「っ、あ」
「全部、入った? 見る?」
グッと腰を持ち上げようとするネイトに必死に首を振る。
これ以上恥ずかしい格好をするのはごめんだ。
「見ればいいのに。すっげーぜ? お前の、ココ」
「ん……っ、ぁ」
結合部に触れた指先。
そのままほんの少し、ビーズが嵌った横から入る。
肉壁がその分広げられて圧迫感が増した。
「気持ちイイ?」
「ッ……ぁっ、やめ、ろっ」
ビーズを中でネイトの指が押し、振動が前立腺に触れた。
腰から刺激が頭の先まで走り抜ける。
「っん、お…い……ッ、はっ」
耐え切れずに身体をよじって逃げようとした瞬間、ぐちゅ、と音を立ててまた一気にビーズが引き抜かれた。
目が眩むような感覚にシーツを握り締めて身体を横に倒した。
「逃げるなって」
すかさず俺の片脚を持ち上げてビーズを挿れてこようとするネイト。
「も、う、いいっ」
「イイ〜だろ?」
「っ、ほんっとにっ、もうっ」
振動するビーズは確かに気持ちいい。
ビーズを引きずりだされる感覚は、それが快感だとわからないままに身体を痺れさせる。
きっと繰り返し出し入れされたら乱れ切ってしまう予感はあった。
でも、だけど―――。
「もうッ」
いい、と身体を起こしてネイトの手を掴んで止めた。
長い間じゃなかったけど、久しぶりに目があったような気がする。
相変わらず笑みをたたえていたネイトは、からかうように目を細めた。



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