でん六様:ネイト→鈴哉



(「I hate...」その後のネイトの想い)


鈴哉、お前はいい奴だ。
俺が保証する。俺の人を見る目なめんな。モンドセレクション金賞レベルだぜ。

この間は、殴ってごめん。笑ってごまかしてごめん。
お前が気ぃ遣ってくれたから、余計ムネがいてーや。

あの夜、俺ほんとに苛ついてた。
リュートがどんどん成長して、俺の手を離れていくのを目の当たりにしていたから。
俺の存在意義がエンプティに近づくのが、不安でたまらなかった。
わかってる。俺には「器の底」ってもんがないから。
いくら街で不遇なコをひっかけたって、誰かを助けたって、自己有用感のゲージは長持ちしない。
鈴哉が抱かせてくれたときは、かなりやばい状況だった。

お前さ、やるときもそうだけど、やられるときもマジメっつーか、らしいよな。
一生懸命痛いのをがまんしてくれて、ほんとにかわいかった。
鈴哉が受け入れてくれたときは、砂漠ん中でぎりぎりオアシスにたどりつけたようなもんだった。ほんとに、ほっとしたんだぜ。
だから…… 調子こいて読みを誤った。

それと俺、人の気持ちを把握するのはデフォルトだけど、自分が心の中をのぞかれるのは大っ嫌い。見透かされるのは超地雷。
だからお前が禁句を口にしたときは、不意打ちもいいとこだったぜ。
いやー思い出したくない。

俺があんなことをしちまっても、鈴哉が怒らずに、気を遣ってくれるのはわかってた。
お前、自分が悪くねぇのにすぐ謝るもんな。それに甘えていた。
抱きしめてくれたときは、正直、嬉しかった。
もうちょっとで俺、なんか口走りそうになったもん。
俺を理解しようとしてくれたのも、髪を褒めてくれたのも……

でも、お前の気持ちを受け取るわけにはいかない。
俺が背負っているものを、誰かに見せる気は金輪際ないからだ。
それに誰かを巻き込むことも、絶対にすまいと思っている。

鈴哉、お前はいい奴だよ。お前と付き合える奴は世界一の幸せ者だ。
初めて会った頃に比べたら、お前すげー成長したじゃん。俺もびっくりだ。

守とは、まあ、縁がなかったけど。
この先お前の器のでかさってか、失恋で得た人間性の深みっつーの?
そういうのに惹かれる奴が出てきそうじゃん。
モテるときがきっとくると思うんだよなー。

鈴哉には、幸せになってほしい。
何の屈託もなく、まっすぐに愛して、愛されて、腹いっぱい甘えて甘やかして、思いきり笑い合える誰かと。
俺みたいに嘘つきでめんどくせー奴じゃなく。
ほんとに、そう思ってるよ。

「もっと自分を大事にしろよ」
いつかお前はそう言ったな。っとに、お人好しなとこだけは変わんねえのな……

鈴哉がこんなにいい奴でなきゃよかった。
俺がお前を挑発したり、隙を突いていいようにしたり、おちょくったりしたときに、怒って背を向けるような奴だったら──
俺が苛立ちをぶつけるたびに、鈴哉は拒絶するどころか、受け止めてくれるけど。
お前が俺なんかに、優しくしてくれるような奴じゃなきゃよかった。

鈴哉、お前と友達になった覚えはない。
だけどお前の傍にいると、俺は安心して「一人」でいられた。
ちょっとしたセフレ的な何かで、俺には十分だったんだ。

ごめんな。

──でも、ありがとう。



END

ネイトのデレきたー!!ジレンマとか思考の自己完結っぷりとか、「ネイトらしいなぁ」と思いました


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