メモ絵ログ




●恋の話(守)●

自転車で坂道を上り切ったときの、体がフッと軽くなる感じ
トンボが指先に止まったときの、おっかなびっくり嬉しい感じ
雨上がりのアスファルトの、なぜだか懐かしい感じ
あなたのそばにいると、そんな感じがする

坂道を上るのはどの自転車でもいいし、指先に止まるのはどんなトンボでもいいし、
雨が降るのはどこのアスファルトだっていいけれど、
あなたはあなたでなければいけない気がする
他の誰でもなく、あなたでなければだめな気がする
そして俺がそうであるように、あなたにとって俺もそうであればいいなと思う

夕焼けに赤く赤く染められていくときの、言葉にならないあの感じ!
あなたのそばにいると、そんな感じがする




●自転車守号の話(鈴哉)●

「いつか彼女を乗せて坂道を降りるのが夢なんだ!」
守が自転車をこぎながら、後ろの俺に聞こえるよう大声で話す。
「そんで途中で急ブレーキかけてさ、彼女が背中にドンってぶつかんの!柔らかい感触がムギューって…あーやべー!」
くだらない妄想に笑いながら、気持ちは分かる、と俺はこたえた。
掴まった肩の力強さや、シャツ越しに感じる汗ばんだ体温。
もっと密着させたら、どんな感じがするだろう。
彼女を乗せて下りたいと話す坂道を、今は俺を乗せて下っていく。
たったそれだけのことで世界がどうしようもなく眩しかった、16の夏。




●散髪の話(リュート)●

ある日、兄さんが髪を切った
ずっと伸ばしていた長い髪を突然切った
「鬱陶しかったから」と笑う足下には、切り落とされた茶色が散らばっていた

それからすぐ、兄さんは沢山の女の子と遊ぶようになった
ときには歳の離れた人や男の人もいたらしい
「お前はこうなるなよ」と笑う首元に、うっすらと赤色が残っていた

あの日 兄さんが本当に切り捨てたかったものはなんだろう
鬱陶しかったものはなんだろう
何も言わず己を変える兄さんと、何一つ変えきれぬままの俺と




●愛の話(ネイト)●

父の分も愛してる
母の分も愛してる
彼らに愛されなかった俺の分も、兄貴としても、
俺がお前を愛してる
でもそれはお前に何ら関係のないことだから
お前は俺以外の誰かと愛し愛され、幸せになってくれたらそれでいい




一緒に(恋に)落ちれば怖くないよ



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