ドーナツタウン初期案(8月編頭頃まではこんな展開予定でした)

 

守とリュートが友達になる。
夏休み、守は時々どこかへ出かけていく。
守ともっと仲良くなりたいリュートが一緒についていくと、病院に到着。
体調の良くないクラスメートの女の子のお見舞いに来ているのだった。
女の子はちょっとふくよかでおとなしい子。ニコニコしながら窓の外の絵を描いている。
守が女の子にばかり話しかけるからリュートはすねて、よくない態度をとって帰る。
そのことで守とちょっと口論になる。
後日、リュートはドーナツを持って女の子に謝りに行く。
会話は弾まない。気まずくなってリュートが女の子の顔を見ると、女の子はニコニコしている。
帰り際、「お見舞いに来てくれてありがとう。嬉しい」と言われる。
リュートは守と一緒にその女の子のお見舞いに行くようになり、やがて一人でも女の子に会いに行くようになる。
特に会話はなく、リュートは本を読んでいて、女の子は風景画を描いている。
その静かな空間を心地よいと感じ始める。

少し肌寒くなった秋の日、女の子の体調が一時的に悪化する。
見たこともない苦しそうな姿にリュートは胸を痛める。
「元気な心臓はないけれど、移り変わる風景を眺める目があるし、色とりどりの絵を描ける手もあるし、お見舞いに来てくれる友達もいるし、そういった全部を嬉しいと愛する心もあるから、幸せよ」と女の子は笑う。
ずっと笑っていてほしい、できる限りの苦しみから守りたいとリュートは思う。
女の子のことが好きになっている。
誰かを守りたいと思ったのは初めての事。

守はリュートの話を聞いてもやもや。
リュートへの恋心を自覚すると同時に二人を応援しようと決意する。
思ったことはなんでも口にしてきた守にとって初めての、ぜったいに隠し通したい秘密ができた。
秘密を貫くことで守は「本音を隠す人の複雑な心理」を少し理解する。

最終的にリュートと女の子は結婚。
友人代表のあいさつを守がする。
「俺の大好きな友達二人が幸せになってくれて俺もすごく幸せ!」

式の後、ネイトは姿を消す。
嫌な予感がして鈴哉がネイトの部屋へ行くとパソコンだけが残されている。
過去の会話からパスワードを解き、メール送信履歴から、牧師にあてた遺書を読む。

ずっと罪の意識があった。魂の汚れは死をもって償わなければならない。
でも死にたいと思っている人間にとって死は褒美であり罰にならないから、贖罪として弟のために生きることにした。
その役目から解放された今。今になって、自分の人生を歩みたくなっている自分自身に気づいた。
誰かを、自分自身を、少し愛してしまっている。死にたくなくなっている。
だからやっと罰されることができる。

鈴哉は購入履歴や検索履歴からネイトが向かった空港を特定、追いかける。
搭乗口 ギリギリで捕まえて、空港近くのホテルに一泊。
説得したりケンカしたりエッチしたりしてようやくネイトを諦めさせる。
証拠を残すなんてツメが甘いと鈴哉が言うと、ネイトは最期の賭けだったと答える。
もしかしたら鈴哉が追ってくるかもしれないと思って。
「賭けに勝ったな」と鈴哉が言うと「ちがう、負けたんだよ」とネイトが笑う。
勝てば終了だったのに、あーあ、延長戦だなぁ。

ネイトを保護した知らせを受けて守はホッとする。
何も知らないリュートと女の子から、幸せそうな新婚旅行の写真が届く。
俺の好きな人たちがみんな幸せでありますようにと願う。

まだ胸は痛むけれど、満たされない想いも癒えない傷もそのままでいいのかもしれない。
心の穴を完全に塞ぐことができなくても、
穴があるからドーナツだし、不完全だから人間なのだろう。

 

END



2021補足
初期案からの変更点

・女の子のいない世界軸にして、バウムクーヘンエンドを回避しました
・牧師の存在も無しにしました。マリ(母親)に内緒でネイトはときどき教会へ行って牧師と交流しており、自殺はいけないとか、神が救ってくれるとか、いろんな話を聞いていた設定でした
・ネイトの自殺願望も消しました。初期設定ネイトは罪悪感を強く抱えるタイプでしたが、ずっと罪の意識を感じ続けるほど純粋無垢ではないだろう(それはリュートのほうだろう)と思い、罪悪感の薄れていく自分を俯瞰的に見るタイプに変更しました。
・初期案より「病み」を減らし、より明るくBL度の高いハッピーエンドを目指しています



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