留輝様:ドーナツタウン

エイプリルフールの嘘合戦!

(守VS鈴哉)

「スズー、PCサンキュ」
「あぁ、もういいのか?」
 春休みのうちに1度ぐらいは、ということでおふくろさんと話していたらしい。
「おふくろさん、なんて?」
「あぁ……、それがさ」
 なんだ? この急にテンションの下がる様子は。
「あの、な。母さんたち、帰ってくるらしい」
「へー。よかったな」
 よかったのかどうかはわからないけど。
 守にとっては大切な親だからな。
「それでさ、家族3人で暮らそうかって」
「え?」
「だから、2人暮らしは終わりっていうことに……」
 ま、まさかだろ。
 そりゃ、永遠に守と2人暮らしなんてできるはずがないことぐらいわかっていた。
 だけど、こんなに早く?
「……1人になりたい。出て行ってくれ」
「あ、あぁ」
 守は静かに部屋を出て行った。
「嘘だろ……?」
 それなら、これからここは俺1人で?
 そうは言っても、きっと守もうるさい兄弟も頻繁にやってくるのだろうけど。
 守がいない?
「いやだ……」
 守、リュートには言ったんだろうか。やっぱりまず俺?
 それなら俺次第? いやいや、引き止められるわけがない。
 家族そろって暮らすのが本当は1番いいことのはずなんだから。
「どうすれば……」
 どうすればじゃないって! なんで俺が決めるみたいになってるんだ?
 あいつが、守が一言でも俺に何か聞いた?
 もう守は出ていくって決めてるんだから。
 ……笑顔で送り出すしかないじゃないか。


「守」
 守が部屋のドアを開けて俺を入れる。
 あぁ、こういうこともあとわずかなのか。
 そう思うと涙さえ出そうに……。いやいや、笑顔で。笑顔で!
「やっぱ、家族で過ごすのが1番だよな。また遊びにこればいい。じゃ、部屋戻る」
 座りもせず、ドアも閉めず、一気に言うとくるりと振り返る。
「ちょ……、スズ待って!」
 引き止めるな守。俺が引き止めたくなる。
「ご、ごめん。頼むから話聞いて。座って」
「……」
 迷ったが、守の部屋に座る。
「えっと、泣いてる?」
「泣いてない!」
 ごめんと守がいう。
「あのさ、まず謝る。ごめん。だから落ち着いて聞いて」
「なにを?」
「えーっと、ネイトが昨日言ってたこと覚えてる?」
 ネイト? 何か言ってたか……?
 “明日さー、エイプリルフールだぜ。誰が1番うまい嘘つくかなー”
「今日は……エイプリルフールか」
「そうなんだよなー。まさかスズがだまされると思わなくって。しかも泣かれるし」
「泣いてない!」
 くそう。
 真剣に考えてバカみたいじゃないか。
「でも、これで俺が1番決定だな」
「黙れ! 本当に出ていけ!」
「ひでー、スズ。泣いてたくせに」
「しつこい」
 嘘で良かった。
 言いたいことがあるならそれだけだ。


END

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(ネイトVS鈴哉)

「すーずーなーりー」
「うるさい。俺は勉強がしたいんだ」
「えー、この間受験終わったばっかりなのにまた勉強?」
 受験も無事終了。だけど守のところに“友達”のリュートが遊びに来ている。
 それについてくるネイト。
 相変わらず人の部屋で寝るわ、騒ぐわ。
「大学は高校より大変なんだ。授業が分からなかったら困るだろ。予習だ」
「鈴哉賢いんだから大丈夫だって。だからヤろうぜ」
 真っ昼間からこいつは。
「なー、鈴哉」
「……わかった」
「え!? まじで?」
 俺上な、なんて言いながら服を着ているネイトが見える。
 また人のベッドに全裸でいたのか。
「鈴哉、準備出来たぜ。さ、行こう」
「わかった」
「わかったって、勉強道具片づけろ!」
 机から向きを変えてネイトの方へ。
「ネイト、今日何の日か知ってるか?」
「えーっと……。あ! エイプリルフール?」
「あたり」
 さすが自分が言っていただけあるな。
「それが何?」
「エイプリルフールは嘘をついてもいい日だ。よって今までのことは嘘。ヤらない」
「きたねー、鈴哉!」
「うるさい。文句があるなら帰れ」
 まだ文句を言いつづけるネイトを無視して机に向き直る。
「わかった。今の帰れ、も嘘なんだろ? 本当は帰ってほしくないくせに」
「違う! 今のは本当の帰れ、だ」
 あー言えばこういう。
 何て奴だ。
「わかった。じゃ、俺が鈴哉にヤりたいって言わせるからな。あ、エイプリルフールだから逆だな。そのかわり、ヤりたくないとか言ったらヤれよ、ちゃんと」
「あぁ、いいだろう」
「よし、じゃ今からエイプリルフールだ」
 ……わけのわからない日本語をつかう奴だ。
「鈴哉、そろそろ人肌が恋しいんじゃないか?」
「あぁ、そうだな」
「そろそろヤりたいだろ?」
「あぁ、そうだな」
 時間がたてば、ネイトも飽きるだろう。適当に返しておけばいいんだ。

「なー、鈴哉」
「しつこい。なんだ」
 すぐに飽きるだろうと思っていたが、思った以上にネイトはしつこかった。
 ネイトがエイプリルフール開始宣言をしてからもう30分はたっていると思う。
「おまえがヤらせてくれないならマモとヤってこようかな」
「それはやめろ」
 弟がいる前じゃできないくせに。
「今のはどうとればいい? マモとOK?」
「いいわけないだろ」
「だよなー。鈴哉も夢で犯すしか方法ないぐらいなんだし」
 ムカつく。ニヤニヤするネイトがムカつく。
「うるさいなー。ならヤってこればいいだろ!」
「はいはい。冗談だって。じゃ、鈴哉ヤろうぜ」
「しつこい。ヤらないって言ってるだろ」
「ほー。じゃ、散歩行こうか?」
 あ、しまった。
「ネイト、い、今のは嘘。冗談だって」
「ヤらないっていうのが嘘、か。じゃ、ヤるんだろ? 行こうぜ!」
「あー、違うんだって!」
 結局、ネイトに引っ張られていつもの場所へ。

 そして、最中までも反対言葉で遊ぶネイトだった。
 守にもだまされ、だまそうとしたネイトにまで引っかかった俺はいったい……。


END

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(おまけ:守VSリュート)


「リュート」
「なに」
「えっと……あの……」
「早く言え」
「なななな、なんでもない!」
「?」
 たとえ嘘でもリュートには嫌いと言えない守。


END

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初めて文章を頂きました。素直すぎる鈴哉が可愛いです♪男を泣かせるのおいしいなぁ!


※R18




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